最終更新:2026年5月|内容を最新情報に基づき全面刷新しました。(初稿: 2023年12月)
マツダCX-60は、i-ACTIVSENSEの名のもとに多彩な運転支援機能を搭載するクロスオーバーSUVです。本記事では、自動車メーカー先行開発部門で評価ドライバーを務めた経験を持つ筆者が、CX-60を実走させたうえで運転支援機能の挙動を5段階で採点します。
試乗条件
- 車両:2023年式 マツダCX-60(グレード詳細失念)
- 走行環境:高速道路のみ
- 走行距離:約100km
- 天候:晴天
本記事で扱う範囲
試乗時間と環境の制約上、MRCC(マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール)とLAS(レーンキープ・アシスト・システム)の2機能に評価対象を絞ります。
CTS(クルージング&トラフィックサポート)やDEA(ドライバー異常時対応システム)など他の安全機能については、評価していない理由とともに記事末尾で別途触れます。
なお、過去にメルセデス・ベンツSクラスやLexus LS(Lexus Teammate搭載)を運転した経験との対比も交えながら、CX-60の運転支援機能が持つ個性を浮き彫りにしていきます。
採点結果
CX-60の運転支援機能を5項目で採点した結果は以下のとおり。
| 評価軸 | スコア | 寸評 |
|---|---|---|
| MRCC(クルーズコントロール) | ★★★☆☆ 3/5 | 元気よく加減速する味付けで欧州車志向。先行車や渋滞末尾を見失う事がままあり、画像認識に課題 |
| LAS(レーンキープアシスト) | ★★★☆☆ 3/5 | 介入は比較的積極的。白線を見失う事あり、警告音の出方にも違和感 |
| 機能間協調性 | ★★★★☆ 4/5 | MRCCとLASの縦横分担が明確。LASが先行車横位置も参照する工夫が見られる |
| 操作UI | ★★★☆☆ 3/5 | スイッチ配置に混同要素あるが、慣れれば直感的に操作可能 |
| 総合 | ★★★☆☆ 3/5 | 強み弱み混在。欧州車志向の意欲は評価できる |
総評
CX-60の運転支援機能は、欧州車の積極的な制御思想と日本車的な要素が同居する独特なキャラクターを持っているように感じます。MRCCの加減速制御には欧州プレミアムに通じる気持ち良い味付けが施されており、MRCCとLASの縦横分担という機能間の協調性にも工夫が見られます。
一方で、センサーが先行車を見失うシーンが頻発する点、前方の渋滞末尾を認識が遅い(できない)点、LASの操舵介入がドライバーの操作と喧嘩する場面が多い点など、認識系・介入系の複数領域に要改善点があるように感じられました。
採点基準としては、メルセデス・ベンツSクラス相当を基準に5点、強み弱みが混在しつつ慣れれば実用域に達するレベルを3点に設定しました。
CX-60の総合評価は3点。マツダが目指す欧州車志向のキャラクターは確かに伝わってきますが、業界最高水準との完成度差は車格の違いこそあれ、実走で明確に体感できます。
各機能の詳細評価と、メルセデスSクラス/Lexus LS Teammateとの比較は、以降のセクションで述べます。
クルーズコントロール(MRCC)の評価
MRCC(マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール)はCX-60の運転支援機能の中核で、設定速度内で先行車との車間を保ちながら自動で加減速する機能です。
評価の総括としては、加減速の味付けは欧州車志向で良好ですが、先行車や渋滞末尾を見失う事がままあり、画像認識に課題があるように感じます。5段階で3点。
以下、観点ごとに詳述します。
加減速の質
CX-60のMRCCの加減速制御には、欧州車のような気乗りよさを感じる味付けが施されています。
設定速度まで「グーッ」と一定の加速感で気持ちよく持っていく挙動は、メルセデス・ベンツのアダプティブクルーズコントロールに通じる雰囲気があります。マツダが目指している欧州プレミアム志向のチューニングが、加減速の質感に明確に表れている部分です。国産車のクルーズコントロールに多い「ゆるやか加速」型の味付けと比べると、CX-60の加減速はかなりキビキビした元気でアグレッシブな印象を受けました。
一方、先行車との相対速度に対する反応自体は優秀で、先行車との速度差が小さく巡行しているシーンでは、欧州プレミアムに引けを取らないフラット感があります。
加減速単体の出来は、評価軸でいえば4点相当です。
スイッチ操作性
MRCC関連のスイッチはステアリング右部にまとめて配置されており、右手親指1本で操作できる形式です。
スイッチ自体の押しやすさや設定変更時の車両の応答は標準的。
車速設定スイッチを長押しすると10km/hステップで設定速度を変更でき、走行中の素早い設定変更にも対応します。
車間距離は4段階で調整可能で、これも一般的なADAS搭載車に準じた仕様です。
一方で気になった点:
- スイッチ操作の直後に、車両挙動が「カックン」となる瞬間がある
- 車速設定スイッチと車間距離設定スイッチが横並びで配置されているため、走行中にどちらがどちらか一瞬迷う場面があった
特に後者は、走行中に視線をスイッチに落とせない状況では誤操作の温床になり得ます。新規ユーザーには慣れるまでのストレスを生む可能性があります。
センサが先行車を見失った時の挙動
クルーズ走行中に、センサが先行車を見失うシーンが頻繁に発生したのは気になりました。
具体的には:
- トンネル進入時
- カーブの手前
これらのシーンで先行車を見失い、見失ったまま先行車がいるにもかかわらず「先行車がいない」と判断して設定速度に向かって加速していきます。加減速の味付けが欧州車的に気乗りよく加速する設計のため、加速感が恐怖感に直結して裏目に出る場面があり、運転していて少し緊張する瞬間がありました。
トンネルやカーブは高速道路で頻繁に遭遇するシーンであり、ここでの先行車ロストが多いのは、センサ(レーダー・カメラ)の認識ロジックに改善の余地があると感じます。
渋滞末尾の未認識(最大の問題点)
今回の試乗で最も気になった挙動がこれです。
前方に渋滞が発生し、渋滞車尾端に接近していくシーンで、CX-60のMRCCはその渋滞末尾の停止車両を認識できず、設定速度に向かって突っ込もうとする挙動を見せました。
私がブレーキペダルを踏んで介入したため大事には至りませんでしたが、運転支援機能としてはこれは見過ごせない弱点と感じます。
高速道路の渋滞末尾事故は、ドライバーの不注意でも発生する典型的な事故シーンであり、運転支援機能としてはむしろ最優先で機能してほしい場面です。CX-60のレーダー・カメラの認識アルゴリズムが、停止車両に対する精度に課題を抱えていることを示唆していると感じました。
なお、この問題は試乗時の特定の条件によるものかもしれません。試乗距離は約100kmと限定的であり、再現するかどうかはわからないという点は申し添えておきます。
ただし、評価ドライバーとしての経験からすると、この種の挙動は1度でも遭遇すれば運転支援への信頼が大きく揺らぐものです。
総合的なMRCCの採点を3点に置いた最大の理由は、ここにあります。
レーンキープアシスト(LAS)の評価
LAS(レーンキープ・アシスト・システム)は、車線中央維持のためにステアリングへ操舵介入する機能です。CX-60のLASは積極的な介入特性を持ちますが、白線認識のロスト頻度と警告音の出方に違和感があります。5段階で3点。
介入の質
CX-60のLASは、わりと積極的に操舵介入する印象です。これはマツダの設計思想なのだと思いますが、ドライバーを車線中央付近に積極的に導こうとする挙動が明確に出ているように感じました。
ただし、全般的に自車が走行している車線内の、中央よりやや右寄りに走らせようとする傾向があり、これが私の運転感覚と必ずしも一致しませんでした。例えば見通しの良い直線では中央維持で問題ないものの、LASがやや右寄りに引き戻そうとします。
積極的な操舵介入とこの「右寄り志向」が相まって、ドライバーの操作意図とLASの介入意図が喧嘩する場面が頻繁にありました。ドライバーの操舵にトルクを加える形でLASが介入する以上、これは慣れていないドライバーには違和感、疲労感の原因になります。
介入の強さは設計思想として理解できるものの、ドライバー協調性という点では3点相当です。
白線認識の性能
走行中にLASの中断(一時的な機能停止)が頻繁に発生しました。原因は道路白線の認識を見失うことにあると推測されます。
白線を見失うたびにメーター内の表示と警告音で通知される仕組みになっており、断続的に「中断 → 復帰」を繰り返すシーンがあり、白線認識の性能側に改善の余地があるように感じました。
ただし、白線を見失うシーンの多さは、試乗した路面状況や白線の劣化具合、走行時の逆光条件などの外部要因にも左右されるため、CX-60のシステム単体の問題と断定はできません。今回の試乗環境特有の要素も含まれている可能性は留保しておくべきです。
先行車追従との優先順位
LASとMRCCの関係について、ひとつ興味深い点に気づきました。
一般的には、LASのターゲットは道路白線、MRCCのターゲットは先行車だと思います。
しかしCX-60のLASは、先行車有りの状況では、先行車に追随するのを優先しているように感じられる挙動が見られました。
- 先行車がいる場合:LASは「白線の位置」と「先行車の位置・動き」を参照し、先行車に追従することを優先して制御しているように感じた
- MRCCへの影響:MRCCは縦方向、LASは横方向の制御として個別に動作しており、相互の干渉は少ない印象
縦方向(MRCC)と横方向(LAS)の役割分担が明確で、相互の干渉が少ない設計は評価できます。先行車情報を横方向の制御にも活用しているように見える点は、認識アルゴリズムとしての工夫を感じる部分です。
ただし、これはあくまで実走時に「感じた」印象レベルであり、厳密な検証はしていません。マツダの公式仕様として明示されている動作かどうかも別途確認が必要です。
機能間協調性の採点は4点。これは、CX-60のADAS設計の中で最も評価できる部分です。
他車ADASとの比較
本記事の評価対象はCX-60ですが、ここでは、過去に運転した経験のあるメルセデス・ベンツSクラスとLexus LS(Lexus Teammate搭載)との3者比較で、CX-60の位置取りを明らかにしていきます。
比較表
| 比較軸 | メルセデスS | マツダ CX-60 | Lexus LS Teammate |
|---|---|---|---|
| 介入の強さ | 強。ヨーロッパ人の運転特性に合わせたチューニングで、ON-OFFがかなり強めに入る | 強め。LASが積極的でドライバー操作と喧嘩する場面あり | 中庸。ドライバー感覚に寄せたマイルド味付け |
| 制御の厳格さ | 長い下りで回生やエンジンブレーキだけでなく物理ブレーキパッドを使った制動を行い、設定速度を厳格に維持 | 加減速の質は良好だが、認識系(先行車見失い・渋滞末尾)に課題 | ドライバーに寄り添うようなさりげない制御、まさにチームメイト |
| ドライバー協調性 | 低-中。介入が強く、日本人の感覚には合わないシーンも。初見はかなり驚く | 低-中。LASのターゲットに先行車も含まれる工夫はあるが、操舵介入の強さがドライバーとの一致を妨げる | 高。協調的で違和感が少ない |
| キャラクター総括 | 欧州ドライバー基準の厳格な制御。設定値への忠実性が思想の中心 | 欧州車の元気の良さと日本車の寄り添い感が同居 | ドライバーに寄り添うチームメイト型。日本プレミアムの代表 |
比較表から見えてくるのは、メルセデスSが最も介入が強く制御が厳格、Lexus LSが最もドライバー寄り添い型という、対照的な思想を持つ2極の関係です。CX-60はその中間に位置するハイブリッド性格と表現できます。
CX-60の位置取り
加減速の味付けは欧州車志向で、メルセデスのような気乗りよさを目指していることがはっきりと感じられます。
一方、LASの介入特性では積極的でドライバーと喧嘩する場面もあり、認識系(先行車見失い・渋滞末尾未認識)の完成度はメルセデスSと比較すると明らかに差があり、欧州プレミアムには届いていない部分が残ります。さりとてLexus LSのような完全なドライバー寄り添い型でもありません。
「欧州車の元気の良さと日本車の寄り添い感が同居している」——これがCX-60のキャラクターを最も的確に表す言葉です。
マツダがCX-60に込めた「上質な欧州車に対峙する日本のプレミアム車」という志向は確かに伝わってきます。ただし、業界最高水準との完成度差は試乗で明確に体感できるレベルであったことも、ドライバー視点では正直に伝えておきたいところです。
本記事で評価していない機能
本記事は試乗時間と環境の制約上、CX-60の運転支援機能の中でもMRCCとLASの2機能に評価対象を絞りました。
CX-60には、i-ACTIVSENSEの名のもとに多彩な安全・運転支援機能が搭載されていますが、以下の機能については今回の試乗では評価対象外としています。
| 機能 | 評価対象外の理由 |
|---|---|
| CTS(クルージング&トラフィックサポート) | 低速渋滞域でMRCCとLASを統合する機能。高速走行のみの試乗環境では作動シーンに遭遇せず |
| DEA(ドライバー異常時対応システム) | 意識喪失検知=実車試乗では再現できない |
| フロント/リアクロストラフィックアラート | 駐車場・低速シーンでの機能。高速試乗では作動対象外 |
| ブラインドスポットモニタリング | 車線変更時の機能。試乗時に意図的な検証ができていない |
| 360°ビューモニター | 駐車・低速移動時の機能。高速試乗では使用機会なし |
| 自動運転(高度ADAS) | CX-60の試乗グレードに搭載なし |
「実走で確認していない機能を、カタログスペックだけで評価することはしない」
——これは、元評価ドライバーの基本姿勢として大切にしている部分です。
これらの機能については、別の試乗機会があれば改めて評価記事にまとめることを検討しています。
結論
採点の理由
CX-60の運転支援機能を5段階で採点した結果、総合評価は3点です。各軸の採点理由を整理すると以下のとおり:
| 軸 | 点 | 評価ポイント |
|---|---|---|
| MRCC | 3 | 加減速の質は4点相当、ただし認識系の弱点(先行車見失い・渋滞末尾未認識)で減点 |
| LAS | 3 | 介入の積極性は設計思想として理解、ただし白線認識の見失い頻発で減点 |
| 機能間協調性 | 4 | MRCC/LASの縦横分担が明確、先行車情報の横方向活用に工夫が見られる |
| 操作UI | 3 | スイッチ配置の混同要素はあるが慣れれば直感的 |
業界ベンチマーク(メルセデスSクラス相当)を5点に置いたうえで、
CX-60は「強み弱みが混在する」3点。 これが実走後の率直な判定です。
どんな人に向くのか/向かないのか
CX-60の運転支援機能が合いそうな人:
- 欧州車志向の加減速の味付けが好きな人
- 自分の運転感覚に対し、機械が積極的に介入してくる味付けに違和感を持たない人
- マツダの設計思想に共感している人
注意したほうがいい人:
- 高速道路の渋滞末尾接近で、運転支援に全幅の信頼を置きたい人
- ドライバーの操作と機械の介入が衝突するのを嫌う人
- ベンツやレクサスのADASに慣れていて、それと同等の完成度を期待する人
総評
マツダCX-60は、運転支援機能においても「欧州プレミアムに対峙する日本車」という野心を見せる1台です。加減速の質感、機能間の協調設計には、マツダなりの解釈と工夫が感じられます。
一方で、認識系の完成度と操舵介入の協調性には、ドライバーの視点では明確な改善余地が見えました。マツダがこれからモデルチェンジや改良を重ねるなかで、これらの弱点がどう進化していくのか——それを継続的に観察していきたい1台です。
CX-60オーナーの方には、本記事の指摘が「現状のCX-60の特性を理解して、より安全に運転する」ための参考になれば幸いです。
画像クレジット
- アイキャッチ画像:2022 Mazda CX-60 e-Skyactiv PHEV (Europe) front view by Car and Driver España, licensed under CC BY 3.0, via Wikimedia Commons. 本記事用にテキスト追加・トリミング・リサイズ・WebP変換等の加工を実施。
- 本文中ヒーロー画像:上記と同じ原画像。表示用にリサイズ・WebP変換を実施(テキスト追加・トリミングは行っていません)。
- 本文中インテリア画像:Mazda CX-60 XD Drive Edition Interior (Motor Fan Festa 2026) by Suzuki Ham, licensed under CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons. 表示用にリサイズ・WebP変換を実施。
- 本文中メーター画像:Mazda CX-60 XD Exclusive Mode AWD (3DA-KH3P) by Tokumeigakarinoaoshima, licensed under CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons. 表示用にリサイズ・WebP変換を実施。

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